虫歯の穴を埋めてしまったからといって、「虫歯の治療は終わった」とは言えません。
どういうことでしょうか?
「虫歯で歯に穴があいてしまった」、ということは、「何らかの原因があった」ということです。
虫歯の穴というのは、その結果でしかありません。
穴があいてしまうに至った原因を除去、あるいは減らさなければ、虫歯の治療とは言えないのです。
虫歯になった「プロセスに対する治療」を施さなければ、またどこかの歯が虫歯になってしまう危険性はそのままなのです。
では、そもそも虫歯とはどのようにしてできるのでしょうか?
食べた物をもとに虫歯菌は酸をつくります。
すると、プラーク(歯垢)が酸性に傾き、歯の表面からカルシウム分が溶け出してしまいます。
この状態を「脱灰」といいます。
これに対して、唾液の中和作用や洗い流し作用によって、プラークは徐々に元のpHに戻っていきます。
pHが戻ると、今度は唾液やプラーク中のカルシウム分が再び歯に戻ります。
この状態を「再石灰化」といいます。
虫歯は虫歯菌が一方的に歯を溶かすのではありません。
歯の表面は軽微な「脱灰」と「再石灰化」を日常的に繰り返しています。
このバランスが重要です。
「再石灰化」よりも「脱灰」の方が多くなると、歯が溶けて穴ができてしまう。
これが虫歯なのです。
「脱灰」と「再石灰化」に影響を及ぼす要素はいろいろあります。
まずはやはり、虫歯菌です。
生まれた時に、口の中に虫歯菌はいません。
1〜歳半〜2歳半頃に身近な人(主に母親)の虫歯菌が感染すると言われています。
この時に虫歯菌の種類や多さがある程度決まってしまいます。
もともと虫歯菌の多い人は危険度が高いといえます。
菌の住み家であるプラークは除去した方が安心です。
一方、「再石灰化」の主役は唾液です。
酸を中和する力が高く、分泌される量が多いと有利です。
唾液の力が低ければ、これを補う対策を考えなければなりません。
シュガーレスのガムなどを利用する方法があります。
また、「脱灰」の時間と「再石灰化」の時間を決める要素として、食事の頻度と回数があります。
食事の度にプラークは酸性に傾くので、食事の回数が多いと「脱灰」の時間が長くなってしまいます。
ダラダラと長時間に渡っておやつを食べる、頻繁にアメをなめている、といった食生活は虫歯のリスクが高くします。
その他、フッ素の使用は、抗菌作用や歯質強化作用により、虫歯を防ぐ効果が高いとされています。
このように、虫歯ができるまでのプロセスには数々の要素が関係します。
そして、それぞれの要素(=リスク)は人によって異なるため、虫歯のリスク検査を行ったうえで、虫歯予防プログラムを考えなければなりません。
ここまでしてこそ、初めて、虫歯の治療と言えるのではないでしょうか。