虫歯はなぜできるか
1. 歯の構造
歯肉より上に出ている部分を歯冠、通常歯肉の中に埋まっている根っこの部分を歯根と呼びます。
歯冠と歯根の境界はややくびれていますが、ここは歯頸部と呼ばれています。
A.エナメル質----------

歯冠の表面を覆っている半透明の硬い組織で、人体の中で一番硬い組織です。
カルシウムとリンを主成分とし、歯自体を外的刺激から守っています。

B.象牙質--------------

エナメル質やセメント質の内部にあって、エナメル質セメント質とともに歯の主体をなす組織です。
象牙質は、象牙細管という2-3μmの細い管からなり、エナメル質よりもやわらかく、骨よりもややかたく弾力性があり柔軟性をもっています。

この象牙質が露出された場合は寒冷や熱、化学的な刺激にきわめて敏感になります。

C.セメント質----------

歯根の表面を覆っている硬組織です。
顎の骨(歯槽骨)とくっつく役目をしています。

D.歯髄----------------

神経と血管が分布した組織です。
象牙質の形成や栄養補給、象牙質の修復、細菌などの侵襲に対する防衛、知覚の受容と伝達などの役割があります。
一般に神経といわれていますが、実際には神経ばかりではなく、象牙芽細胞や血管、リンパ管などが含まれています。

2. 虫歯の原因

虫歯の穴を埋めてしまったからといって、「虫歯の治療は終わった」とは言えません。
どういうことでしょうか?

「虫歯で歯に穴があいてしまった」、ということは、「何らかの原因があった」ということです。
虫歯の穴というのは、その結果でしかありません。
穴があいてしまうに至った原因を除去、あるいは減らさなければ、虫歯の治療とは言えないのです。
虫歯になった「プロセスに対する治療」を施さなければ、またどこかの歯が虫歯になってしまう危険性はそのままなのです。

では、そもそも虫歯とはどのようにしてできるのでしょうか?

食べた物をもとに虫歯菌は酸をつくります。
すると、プラーク(歯垢)が酸性に傾き、歯の表面からカルシウム分が溶け出してしまいます。
この状態を「脱灰」といいます。
これに対して、唾液の中和作用や洗い流し作用によって、プラークは徐々に元のpHに戻っていきます。
pHが戻ると、今度は唾液やプラーク中のカルシウム分が再び歯に戻ります。
この状態を「再石灰化」といいます。

虫歯は虫歯菌が一方的に歯を溶かすのではありません。
歯の表面は軽微な「脱灰」と「再石灰化」を日常的に繰り返しています。
このバランスが重要です。
「再石灰化」よりも「脱灰」の方が多くなると、歯が溶けて穴ができてしまう。
これが虫歯なのです。

「脱灰」と「再石灰化」に影響を及ぼす要素はいろいろあります。

まずはやはり、虫歯菌です。
生まれた時に、口の中に虫歯菌はいません。
1〜歳半〜2歳半頃に身近な人(主に母親)の虫歯菌が感染すると言われています。
この時に虫歯菌の種類や多さがある程度決まってしまいます。
もともと虫歯菌の多い人は危険度が高いといえます。
菌の住み家であるプラークは除去した方が安心です。

一方、「再石灰化」の主役は唾液です。
酸を中和する力が高く、分泌される量が多いと有利です。
唾液の力が低ければ、これを補う対策を考えなければなりません。
シュガーレスのガムなどを利用する方法があります。

また、「脱灰」の時間と「再石灰化」の時間を決める要素として、食事の頻度と回数があります。
食事の度にプラークは酸性に傾くので、食事の回数が多いと「脱灰」の時間が長くなってしまいます。
ダラダラと長時間に渡っておやつを食べる、頻繁にアメをなめている、といった食生活は虫歯のリスクが高くします。

その他、フッ素の使用は、抗菌作用や歯質強化作用により、虫歯を防ぐ効果が高いとされています。

このように、虫歯ができるまでのプロセスには数々の要素が関係します。
そして、それぞれの要素(=リスク)は人によって異なるため、虫歯のリスク検査を行ったうえで、虫歯予防プログラムを考えなければなりません。
ここまでしてこそ、初めて、虫歯の治療と言えるのではないでしょうか。

3. 虫歯の進み方

虫歯の実態は、従来は実際に歯を削ってみなければ分からなく、予測の難しい、想像でしかとらえることができませんでした。

しかし、歯科用CTを用いれば、虫歯の立体的な広がり方や、歯随との位置関係を事前にとらえることができるようになりました。
この事により、計画的な治療が可能になり、必要な時間を十分に考慮した完全予約での治療が行えるようになりました。

虫歯の進行度は CO、C1、C2、C3、C4と分類されます。
CO:白濁、白斑、着色が認められる虫歯です。
C1:歯冠の最表層、エナメル質内にとどまっている虫歯です。痛みを感じることはほとんどありません。
C2:象牙質まで進行した虫歯です。
 熱いものや冷たいものに、歯がしみるなどの症状がでることがあります。
C3:歯髄まで虫歯が及んでしまった状態で、激しい痛みがあります
C4:歯冠のほとんどが溶けてなくなり、歯の根だけが残っている状態です。

4. 虫歯の種類(発生部位による分類)
虫歯は発生する部位によって分類できます。
(虫歯のことを専門的には、「う蝕」あるいは「カリエス」と呼びます。)

・小窩裂溝う蝕

歯面の点状の深い部分(小窩)や狭い溝(裂溝)にできる虫歯です。
小窩裂溝は奥歯のものをかむ面(咬合面)や頬側の面に存在します。
裂溝の幅や深さは人によって異なり、歯ブラシの毛先が届かないほど狭く深いと虫歯のリスクの高い部位です。
しかし、黒くなった裂溝は必ずしも虫歯とは限りません。
鑑別診断にはダイアグノデントによる診査が有効です。

・平滑面う蝕(隣接面う蝕)

エナメル質のなめらかな面にできる虫歯です。
ミュータンス菌がつくる不溶性グルカンという粘っこい物質で菌が歯面にくっつくことから始まります。
隣り合う歯と歯の間にできる平滑面う蝕は隣接面う蝕と呼ばれます。

・根面う蝕

歯根の表面を覆っているセメント質から始まる根面う蝕は、中年以降に多くできます。
歯根面は、歯肉がやせてくる(退縮する)と露出してきます。
セメント質はエナメル質よりもやわらかく虫歯に冒されやすい部分です。
露出した根面は歯みがきが難しく、唾液分泌量の影響も受けやすいので、特に注意して予防する必要があります。

・二次う蝕

虫歯治療した後の詰め物と歯の間にできる虫歯です。
詰め物と歯の間の隙間(目に見えないくらいの隙間も細菌にとっては十分なスペースです)や虫歯の取り残しが原因です。
詰め物の下が象牙質であった場合は、初発の虫歯よりも進行がはやいことが多いです。


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